本記事は、藤井孝一氏の著書『本当に頭のいい人が実践している AI時代の読書術』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

読書
(画像=Konstantin Yuganov / stock.adobe.com)

何を読めば頭が良くなるのか

これまで繰り返してきたように、AI時代に読書をする目的は脳トレです。そのためには、多様な本を読むべきです。これまで書いたことと変わりませんが、強しいて選ぶならAI時代に求められる能力を磨ける本を中心に読みたいものです。すなわち、創造性を育む本、人間性を磨く本、経営者の思考法を身につける上で役立つ本です。そうした本は、ビジネス書の中にもたくさんあります。こうしたジャンルを中心にして、多様な本をバランスよく読むことで、創造力を育み、人間関係を理解し、経営的な思考力を養うことができます。

反対に、特定のビジネススキルのノウハウを扱うマニュアルや教科書、ガイドブックのような本は、情報がネットに溢れていますし、作業の多くをAIが代行するようになるため、次第に読まれなくなる可能性があります。

◎脳トレだから、あえて負荷をかける

上記の能力を鍛えることを意識しつつ、幅広い書籍の中から本を選ぶことが脳トレになると思います。むしろ、脳に負荷をかけることを意識して、あえて専門外の本を読むことが必要かもしれません。

実際、いわゆる成功者と呼ばれる人たちは読書家ですが、専門分野に限らず、多様で広範な分野の本を読んでいます。

読書というと、つい仕事に直結したものを読みがちです。せっかく読むのだから役立てたいし、手っ取り早く役立てるには明日の仕事に使えるものを読もうと思うからです。もちろん、こうした本を読むことはある程度必要でしょうが、その目的が仕事の答えを安易に求めることでは脳トレになりません。

AI時代には独自の思考や自分ならではの発想が求められます。それは、まだ本にないものであるはずです。これこそがAIが答えにくい答えであり、そういう答えを導き出せることこそが、当面AI時代に人間が求められる力だからです。

しかしながら、現実には本には大概の答えが書いてあります。はじめは自分で考えるつもりで読み始めても、答えが見つかれば、あえて考えようとはしなくなるものです。少なくとも本に書いてあることに引っ張られます。その結果、答えは手に入っても、独自の発想や脳トレの機会は逃してしまいます。たとえるなら、学力をつけようと問題集を手にしながら、先に模範解答を読んで満足するようなものです。これでは、答えは手に入っても、学力はつきません。

◎自分の頭で考えるからうまくいく

私も、新しい仕事、たとえば未知の業界のコンサルティング、執筆、講演などに着手する際は、本を入手することにしています。でも、最初は読まないようにしています。まずは自分で考え、一度自分なりの答えを出した上で、答え合わせのために参考文献を読んでいます。未知の分野なので、自分の答えは見当違いの間違いだらけということも少なくありません。それは謙虚に修正しますし、間違えれば悔しいので、次は間違えまいと必死で理解します。だから定着します。時には、素人だからこその斬新な発想を得ることもあります。そういう発想は、自分のオリジナルなものとして大事にします。

たとえば、私は独立当初、起業のコンサルティングをしようと独立しました。しかし、起業家向けのコンサルタントは、業界では成り立たないと言われていました。起業する前は収入がないため、コンサルタントに多額の報酬が払えないからです。独立開業の本を読んでも、その方法は書いてありませんでした。しかし、私は異業種からの参入であったため、そのあたりの常識がありませんでした。そして、学習塾や水泳教室が成り立っているのだから起業の学校も成り立つはずだと考えました。そして「会費制、メールで質問し放題」という方法で始めました。報酬を1人から多くいただく代わりに、大勢から少しずついただくことにしたのです。このビジネスは結果的に20年以上にわたりキャッシュを生み続けました。今では、こうした方式はオンラインサロンなどで当たり前になっていますが、当時は前例がなく競合もいませんでした。本に書いてあることでなく、自分の頭で考えて得た発想だからこそうまくいったのです。

◎あえてビジネスと無関係の本を読む

このように、別の業界から着想を得ることは、いくらでもあるものです。同じ理由で、ビジネスで斬新な発想を得るために、あえて仕事とはまったく関係ない本を読んでみることをおすすめします。たとえば、歴史書や小説などを読んだら、そこで得た学びを自分の仕事に役立てられないか考えるのです。

まったく関係のないものからでも学べるようになると、学びの速度が加速します。学びの機会が格段に増えるからです。私は、仕事の関係で、自社でセミナーを主催することが少なくありません。セミナーの受講者には、必ずアンケートを書いてもらいますが、受講者から「役立たなかった」というフィードバックを得ることもあります。その理由を読むと「経営者の話だから、一般社員の自分には役立たない」とか「アメリカ人の講演だから、日本と事情が違い過ぎて役立たない」ということが書いてあります。

しかし、学び上手はそういうことは書きません。彼らは、経営者の自伝であろうと、海外の事例であろうと、何なら歴史書であろうと、自然科学の本であろうと、小説であろうと何かしら学び、自分に役立てようとします。転んでもただでは起きないのです。それには工夫も必要ですから、脳に負荷がかかります。

自分にすぐに役立つ情報だけを吸収するのでは、離乳食しか食べれない赤ん坊と同じです。大人なら、どんな情報も自分流に調理して、自分の栄養に変える工夫をしたいものです。そのほうが楽しいし、脳も鍛えられると思います。

ワンポイント
あえて仕事と関係ない本で、脳に負荷をかける
AI時代の読書術
藤井孝一
経営コンサルタント。株式会社アンテレクト取締役会長。年間,1000冊以上のビジネス書に目を通し、300冊以上読破する愛読家。その経験を活かして発行される要約と書評のメールマガジン『ビジネス選書&サマリー』は、同分野で日本最大級の読者数を誇る。雑誌などのビジネス書特集で本の選定や書評を行い、企業の研修で読み方の指南を行うなど、書籍に関する活動も積極的に行う。自らもビジネス書を多数執筆している。代表作『週末起業』(筑摩書房)をはじめ50冊以上。うちいくつかは中国、台湾、韓国でも刊行されている。
『読書は「アウトプット」が99%』(三笠書房)、『ビジネススキル大全』(ダイヤモンド社)、『投資効率を100倍高める ビジネス選書&読書術』(日本実業出版社)、『成功するためのビジネス書100冊』(明日香出版社)などビジネス書関連の書籍も多い。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます。
ZUU online library
※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます。