本記事は、藤井孝一氏の著書『本当に頭のいい人が実践している AI時代の読書術』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

思考力
(画像=escapejaja / stock.adobe.com)

AI時代に磨く思考力

AI時代には、読書で思考力を鍛えるべきですが、AIを使いこなしたり、AIが苦手なことをしたりするために、どのような思考能力を磨くべきでしょうか。

これについて、求められる能力がそれほど大きく変わるものではないようです。総務省「平成29年通信利用動向調査」によると、AIの普及に対応するために従業員に求める能力について、40%以上の企業が「創造性」「人間的資質」「業務遂行能力」を挙げています。これらは、これまでもあらゆる仕事に求められてきた能力であり、AIが普及しても重要性が変わらない基礎的な能力と考えられているようです。

とはいえ、この調査はChatGPTが登場する以前の調査ですし、個別の仕事については次第にAIに代替されていき、AIが苦手な仕事だけが残るはずです。

AIが苦手な仕事とは、当面は創造性が必要な仕事、非合理的な判断が求められる仕事、人の気持ちをみ取る仕事などと言われています。そうしたことを念頭に置きつつ、基礎的能力を磨いていけばいいと思います。

◎創造力

創造力とは、刺激やひらめきから新しいものを創造する能力です。これは、今のところ人間にがあります。ビジネスでは、新しいビジネスの立ち上げなど、一つひとつがユニークで、同じ方法で行われにくいものを作り出すことです。具体的には、新規事業の立ち上げや斬新な手法による問題解決は、現時点では人間の仕事です。もちろん、AIの能力が進歩すれば、そうしたこともいずれ可能になるでしょうが、当面は人間の専売特許です。

こうした創造性を育むにも読書は有効です。読書では、活字から様々なシーンを想像します。物事を構造的・多面的に見て、感じ、理解し、意味合いを突き詰める訓練ができます。様々な分野の本を読めば、脳内で新しいつながりが生まれます。そこから得られたひらめきや革新的アプローチは、AIが普及したビジネスシーンでも役立つはずです。

◎人間力・コミュニケーション力

人間力やコミュニケーション力が大事なことは、AI時代も変わりません。AIはヒューマンタッチなやり取りが苦手です。冷たい感じがするため、Siriには人生相談や医療相談など、高度な相談はしたくないと考える人が多いと思います。少なくとも、こうしたやりとりは人間としたいと思う人が多いはずです。これは、人間の本能であり、AIが進歩しても代わりえない部分だと思います。

だから、少なくともインターフェイスの部分は人間が担うことになるはずです。たとえば、医療の現場で膨大な症例から最適な治療法を見つけるのはAIでも、それを伝える役割として人間は求められると思います。その時、問われるのは人間らしさであり、コミュニケーション力です。

また、コミュニケーション力はAIを使いこなすためにも必要です。AIとも対話が必要だからです。中でも、指示や質問をする力が大事です。質の高い指示をするほど、質の高いアウトプットが得られるからです。だからこそ、AIに指示したり質問したりするプロンプトデザイナーという仕事が成り立つのです。

人間力やコミュニケーション力を養えるのも読書です。様々なジャンルの本を読めば、作者の気持ちや、登場人物の感情などがわかるようになります。読書で他人の考えや、喜び、悲しみ、痛みに触れることで、他者とのコミュニケーション能力が向上します。さらに、読書で語彙が増えれば、コミュニケーション力はさらに上がります。内容に疑問を感じることもあるでしょうから、質問力も磨かれます。

◎目的地を決める力

カーナビの例で解説した通り、これからは目的地の設定が人間の重要な役割になると思います。AIは瞬時にゴールへの道筋を示してくれますので、人間は「何をしたいか」「何をすべきか」を、その意味や目的とともに考え、それを評価することに専念していくことになると思われ、真価もそこで問われるようになると思います。

これまで、組織の中で、ゴールを決め、その意味を考え、決めることを担ってきたのは主に経営者をはじめとするリーダーです。彼らの仕事は、自分のやりたいこと、やるべきことを決め、その実現に向かって組織を動かすことです。そう考えると、経営者の仕事こそ、AIに代替されない仕事と言えそうです。いわば、ナビに目的地を入力する仕事です。

これこそが最後までAIに置き換わらない究極の仕事です。

AIとの競合を避け、AIに置き換わらないようにするには、社長のように考え、働くことです。そのためには、ゴール設定や、やりたいこと、やるべきことを明確にする力を磨くことです。

そのためにも有効なのが読書です。読書は思考方法を形成します。経営者の書いた本を読んだり、経営者が読んでいる本を読んだりすれば、経営者の思考が理解でき、思考パターンが手に入ります。

事実、経営者には読書家が多いのです。私は経営コンサルタントとして、また経営者としてたくさんの経営者と付き合ってきましたが、その経験からも経営者には読書家が多いことを感じます。

このように、AI時代に求められる能力は、読書で鍛えることができます。AI時代に生き残り、活躍するには、こうした資質を磨くことを意識しながら読書することが求められるのです。

ワンポイント
読書で創造力や人間力、経営者の思考法を育むことを意識する
AI時代の読書術
藤井孝一
経営コンサルタント。株式会社アンテレクト取締役会長。年間1,000冊以上のビジネス書に目を通し、300冊以上読破する愛読家。その経験を活かして発行される要約と書評のメールマガジン『ビジネス選書&サマリー』は、同分野で日本最大級の読者数を誇る。雑誌などのビジネス書特集で本の選定や書評を行い、企業の研修で読み方の指南を行うなど、書籍に関する活動も積極的に行う。自らもビジネス書を多数執筆している。代表作『週末起業』(筑摩書房)をはじめ50冊以上。うちいくつかは中国、台湾、韓国でも刊行されている。
『読書は「アウトプット」が99%』(三笠書房)、『ビジネススキル大全』(ダイヤモンド社)、『投資効率を100倍高める ビジネス選書&読書術』(日本実業出版社)、『成功するためのビジネス書100冊』(明日香出版社)などビジネス書関連の書籍も多い。

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