銀行員の転職率が増加しつつある。2013年と比べて2018年は銀行出身者の転職決定数は約2倍になっているという。(※リクルートエージェント「転職市場の展望【2020年版】」より)では40代の銀行員の転職事情はどうなっているのだろうか。銀行員の転職業界や転職のポイントについて見ていこう。

銀行員の転職は難しいのか 銀行と同じような規模・待遇では難しい可能性

銀行員,転職
(画像=Minerva Studio/Shutterstock.com)

近年、銀行員の転職者数が増えている。大手求人サイトdodaの調査では2013年から2018年にかけて転職市場全体の登録者数は約3倍に増えているのに対し、銀行出身の登録者数は約4倍になった。これは転職市場の伸長率よりやや高く、近年の銀行の店舗や人員削減が影響していると考えられる。(※doda「業界別マーケットレポート『金融業界』」より)

銀行出身者で大企業への転職を志望する人にとってより厳しいといえる。人口減少による労働力不足が続いているとはいえ、人手不足感が大きいのは中小企業だからだ。

新卒採用市場においても大企業の求人倍率0.37倍に対し、中小企業の求人倍率は9.91倍と大きく差が開いている。銀行員時代と同じように大企業で高待遇を望む転職希望者は、必然的に転職も難しくなってしまうといえるだろう。(※リクルートワークス研究所「大卒求人倍率調査(2019年卒)」より)

40代銀行員の代表的な3つの転職先と職種 金融、コンサル、ベンチャー

この10年ほどで銀行員が転職先として選ぶ会社に変化が見られている。2009年度には約半数が同業種である金融業に転職していたが、2017年度には約3割に減少し、ほかの業種への転職割合が増えているのだ。

銀行員の転職先としてどんな業種や職種があるのか、銀行でのキャリアや仕事内容を踏まえ検討していこう。

(1)金融業界の同職種……証券、保険などの同業他社、最近ではIT企業も

同業他社としては証券会社、保険会社などがある。銀行でも投資信託や保険商品が「銀行窓販」として取扱いが可能になったため、個人や法人への営業を経験した人にとっては親和性が高い業界だろう。

近年は金融とITテクノロジーを組み合わせた新たな分野として「フィンテック業界」も注目されている。フィンテック業界は幅広く、キャッシュレス決済や仮想通貨、クラウドファンディングなどビジネスモデルも多岐にわたる。今後ますます成長が期待されている業界だ。

同業である金融業界へ転職するメリットは、これまで培ってきた金融の知識が活かしやすい点だ。仕事内容や給与形態も似ている場合が多いため、給与アップもしやすいだろう。

一方デメリットは金融以外の知識やスキルを身につけることが難しい点だ。また、保険や証券ではより専門的な知識やコンサルティング力など個人の力量が求められる可能性もある。

(2)コンサルティング業界のコンサルタント……高年収でハイスキルだが仕事量も多い

リクルートエージェントの調査では、銀行出身者はコンサルティング業界へ転職するケースが増加しているという。(※リクルートエージェント「転職市場の展望【2020年版】」より)

コンサルティングファームは扱う分野や外資系か日系かなどいくつかの種類がある。外資系コンサルではマッキンゼー・アンド・カンパニー、ボストン・コンサルティング・グループなどが有名だ。日系では船井総合研究所などが挙げられるだろう。

銀行員は数字に強く、融資に関わる中で大手企業の経営や実際のビジネスを体感でしているため、銀行での経験を活かせるコンサルタントを志望する人が増えているようだ。

コンサルティング業界のメリットは、コンサルティングに関連する高いスキルを身に付けられることだろう。それらを活かし、更なるキャリアアップをする人も少なくない。また、外資系のコンサルティングファームであれば海外案件などグローバルに活躍できる機会があるのも魅力だ。一般的に高年収といわれており給与アップも期待できる。

デメリットは一般的に仕事量が多く、激務であると言われていることだろう。プライベートとの両立は難しいかもしれない。また異業種への転職時に年収ダウンとなる可能性も高い。

(3)ベンチャー企業の財務部門やCFO……財務に関するスペシャリストへ

銀行員時代の財務知識を活かしたいのであれば、その道のスペシャリストとしてのキャリアも考えられる。大手事業会社の財務部門やベンチャー企業のCFOであればスキルを活かし重要なポジションへ就くことも可能だろう。

DeNAの前取締役会長・春田真氏は三井住友銀行出身で、DeNAのCFOを勤めたあと、取締役に就任している。

メリットは自身が持っている知識やスキルをそのまま活かしやすく即戦力として働けることだろう。また規模がそれほど大きくない会社であれば裁量権や決定権の大きな仕事をできるのも魅力だ。

一方デメリットは、会社によっては給与が下がることも考えられる点だ。またベンチャー企業の場合、社内体制や福利厚生などがしっかりしていないこともあるため、銀行と同じような待遇は受けられない可能性もある。

40代銀行員が転職を成功させる3つのポイント 収入、専門性、転職の目的

前述のような業界への転職が考えられるとはいえ、40代の転職はそう簡単ではない。20代、30代に比べ求人数は少なく、長年一つの会社で働いていると自身の希望する待遇と市場での価値にギャップが出てくるためだ。

ここではそのような40代の銀行員が転職を成功させるための3つのポイントについて見ていこう。

(1)転職の目的を明確化する

転職の目的を明確化することは、成功する転職には欠かせない。特に新卒の頃から銀行員として働き、転職を経験していない人が40代で転職する場合、他企業からはなぜ今転職を考えたのかが問われるだろう。なぜ新しいチャレンジをするかは明確な理由を持っておくべきだ。

反対に銀行から転職する明確な理由がなければ、転職を考えるのは時期尚早かもしれない。40代での転職は給与ダウンや希望の条件の企業がないリスクもあるからだ。本当に転職する場合は見切り発車をしないよう、エージェントや家族に事前に相談しておこう。

(2)収入に重きを置かない

メガバンクに勤務している40代の銀行員となると、収入も同じ世代に比べて高いのが一般的だろう。転職の際も現在と同じ給与を希望している場合、なかなか条件に合う求人が見つからない可能性もある。

もちろん収入も転職条件における重要な要素だが、転職を成功させるためには現在の収入をあげることにこだわらないようにしたい。収入面に不安がある場合は一度自身の現在の家計を見直してみよう。収入がいくらであれば現在のように生活できるか、もしくは生活レベルを下げることも可能かなどの選択肢を持つことで、転職先の幅も広げることができる。

家族を交えて今後のライフプランを検討することが成功に導く1つ目のポイントだ。

(3)自身の専門性を活かす

ポテンシャルが重視される若手とは異なり、40代の転職には専門性やマネジメントスキルが求められる。銀行の中ではある程度の立場にあった人でも、新たな職場で同じ肩書が通用するとは限らないだろう。

同業種や同職種であればこれまで培ったスキルや知識を活かしやすく、給与やポジションのアップもしやすいだろう。ただ転職で評価される専門性を知るためには、客観的に自分のキャリアを棚卸する必要がある。転職エージェントなどを効果的に利用し、自身のスキルがどれほどの市場価値があるか可視化しよう。

異業種や別職種にチャレンジする場合はこれまでのキャリアやスキルを活かしづらいため難易度が上がる。どんな仕事でも活かせる課題解決能力やマネジメントスキルをアピールすることが必須だ。

銀行員からの転職で有利な3つの資格 FP、宅地建物取引士、中小企業診断士

銀行員は入社したときから何かと試験が続き、常に勉強をしてきたはずだ。しかし、銀行員時代に取得した試験は銀行、もしくは金融機関でしか通用しないものが多い。銀行員として蓄積した知識を活かし、他でも通用する代表的な資格を3つ紹介しておこう。

(1)ファイナンシャル・プランナー(FP)……金融機関への転職に有利、1級は難関

金融全般に関する知識を証明する資格である。内容は、ライフプランニングと資金計画、リスク管理、金融資産運用、タックスプランニング、不動産、相続・事業承継の6つの分野に関して満遍なく出題される。

3級、2級、1級それぞれに学科と実技試験がある。1級の合格率は10%前後と難易度は高めであるが、資格の優位性を考えれば1級取得をしておきたい。

資格の活用については企業に属するのであれば保険、不動産関連の金融営業、企業の総務や福利厚生部門など幅広く対応できる。金融コンサルタントとして独立も可能だ。

(2)宅地建物取引士……不動産・金融関連での転職で有利、合格率は15%

宅地や建物の売買や交換、賃貸などの不動産取引が行える国家資格である。内容は土地や建物、宅地に関する法令や評定、種別に関することが細かく出題される。合格率は15%前後と難易度は高めだ。

不動産業界で勤務するには一般的な必須資格であり、それ以外でも金融機関や不動産コンサルタントなどで活用ができる。

(3)中小企業診断士……コンサルティング業界で有利な資格、独立も可能

中小企業の経営課題に対する診断や助言を行う国家資格である。内容は、筆記の1次試験と筆記と口述による2次試験がある。科目は経済、経営、財務・会計、運営、法務、情報システム、中小企業政策など広範囲にわたり科目合格も認められている。

2019年度の合格率は1次試験が30.2%、2次試験が18.3%となっている。難易度はある程度が高く、合格に向けた勉強時間をしっかり確保する必要があるだろう。合格後は経営コンサルタントとしてコンサル系企業へ転職、または事業会社で経営の中枢に関わるのにも有利だ。

40代で銀行員が転職するには入念な準備をしてから

40代での転職は容易なことではないが、確固たるビジョンとそれに向けた準備が整っていれば可能である。人生100年時代、自身のあるべき姿を思い浮かべながら進むべき方向性を模索してみても良いでのはないだろうか。

文・高村浩子(ファイナンシャル・プランナー・キャリアコンサルタント)/MONEY TIMES

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