正論を言うべきか、お客様の意見に合わせるべきか――。迷ったことがある人は多いのではないだろうか。相手をおだてて肯定だけするのがいい営業ではない。大切なのは、相手を納得させる伝え方だ。

営業ケーススタディ(9)――裏目に出た新垣の熱意

社会人1年目の新垣理子(22)は、セミナー後の相談会で意図せずお客様を怒らせてしまう。挽回するため後日訪問するも、果たして関係修復はなるのか――。15年目のベテランである先輩・及川圭佑(37)の解説も交え、相手の気持ちを汲み取って正論を伝えるための話法を紹介する。

反論したら怒られた!関係を再構築するには?

営業心理学,反論,議論
(画像=autumnn / shutterstock.com、ZUU online)

「セミナーじゃ、学生の機嫌をとるようなやり方ばっかり紹介してたけど。内定を辞退してくるような不義理な学生には、そもそも来てほしくないんだよね」--。

定期開催しているセミナーでは、終了後に相談ブースを設けている。セミナー参加者である、かっぷくのいい社長の話は、さっきから終わりが見えない。学生を見下したような横柄な話し方に、新垣は内心苛立ちを募らせていた。

先輩である若林が急な営業で外出したため、今日は新垣が代わりにブースに入っているのだ。社長は続ける。

「そういうやる気のない学生を見分ける方法とかってあるの?」

「イベントなどを通じて、入社意欲を確認する方法はあります。しかし、内定辞退を100%見抜くのは難しいですね。そもそも内定辞退を見越した上で……」

控えめに提案しようとした新垣の言葉を、社長は鼻で笑って遮った。

「それで採用コンサル名乗ってちゃだめでしょ」

新垣の中で何かがプツンと切れた。