インフレ(物価上昇)が続くと必要な教育資金額もアップする。これまで教育資金の準備と言えば「学資保険」であったが、今後はインフレリスクも考慮して商品選びをする必要がある。学資保険に代表される貯蓄型の保険とインフレについて考えていきたい。

生命保険がインフレに弱いとされるのは本当か?

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(画像=Hyejin Kang/Shutterstock.com)

インフレとは、「インフレーション」の略語であり、モノやサービスの値段(物価)が時間の経過とともに上がり、相対的にお金の価値が下がる現象を差す。インフレの世の中では、ある年に100円で買えたモノが次の年はその値段では手に入らなくなる。

安倍政権は2%の物価上昇(インフレ誘導)を目指して量的緩和策を続けている。デフレ物価に馴染んできた感覚からするとイメージしにくいかもしれないが、その目論見通りに経済が動くとすれば、100円の商品を5年後買うためには110円が必要になる。現在から遠い将来を考えるときほどインフレの影響は大きくなってくる。

インフレと生命保険の関係はどのようなものか。終身保険は死亡したら○○万円の死亡保険金がおり、医療保険は一日入院で○千円の入院給付金が給付される。定額での給付金が多いこれらの生命保険商品は、総じてインフレに弱いと言えるだろう。

貯蓄型保険のインフレリスクとは

死亡保険ほどではないが、学資保険も幼子の親が加入を検討する商品だ。保険期間は長いものでは20年を超えるプランもそう珍しくはない。今後インフレになると考える人にとっては、学資保険の戻り率の低さも相まって選びにくい保険商品かもしれない。

学資保険に限らず、貯蓄型保険は契約時の予定利率等によって総支払保険料が決まってくる。お宝保険と呼ばれる高い予定利率の商品とは異なり、今の生命保険の予定利率はかなり低く、貯蓄性は下がる一方だ。昨年2017年は予定利率の引き下げや学資保険・低解約返戻金型終身保険の販売停止を行う保険会社もあった。

保険契約時の予定利率は契約転換などがない限り最後まで変わらない。契約時に利回りが確定するため、もし保険加入後にインフレが進行すれば、実質的な資産価値はさらに目減りする。預貯金や株式とは違い、有利な商品への預け替えや売買できない貯蓄型保険は、インフレになった場合は払済保険にしてそれ以上保険料支払いを増やさないことぐらいしかできないのではないだろうか。

学資保険の戻り率を上げる「短期払い」の落とし穴

予定利率が下がると学資保険の戻り率は下がる。そのため、少しでも戻り率がアップするように子が18歳を迎えるより前の10歳や15歳で保険料を払い終える設計(「短期払い」)が増えてきている。

ある学資保険で試算してみたところ、契約者=30歳男性/子0歳/受取学資金総計300万円/保険料払込期間10歳で戻り率は106%弱まで上がった(保険会社HPのシミュレーション機能を用いて筆者が試算した結果。2018年7月現在)。

保険料の「短期払い」は、総支払保険料を抑え貯蓄性を高める有効な手法であるが、インフレを考えた場合はどうか。

「短期払い」はその名の通り保険料払込期間が短いため1回あたりの保険料は高くなる。たとえば前述の学資保険で試算したケースでは、毎月の保険料は2万3640円にも上る。なおかつ、保険料払込期間後かなりの年数を据え置かなくてはならない。上のケースでは18歳までの8年近く、数百万円の資産が自分の意思で動かせない状況になる。

毎月の家計への負担感が高く、資金の流動性が低いため、世帯年収がある程度高くないと途中で息切れを起こしてしまうかもしれない。

インフレに強い金融資産とのミックス積立を考える

前段の毎月保険料と同じ金額とは言わないまでも、たとえばその半分ほど1万1000円を一般的にインフレリスクに強いとされる株式投資で運用したとしよう。

国の年金運用を行っている機関GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の基本ポートフォリオ定期検証資料によると、国内株式は約3%の期待リターンとなっている。それを踏まえて、毎月1万1000円を3%の利率で18年間積み立てていったとすると、税引き後の積立元利金の合計額は296万4236円(元金:237.6万円)になる計算だ。これは前段の受取学資金総計とほぼ同じ金額となる。

株式は元本割れする恐れのあるリスク性資産のため、一見すると教育費の準備には似つかわしくないと考える向きもあるだろう。ただインフレへの対応を考えて、学資保険のような確実に貯められる手段とジュニアNISAなど税制優遇のある仕組みのダブルで積立してみるのもひとつの対抗策だと言える。

配当性向の高い企業や魅力的な株主優待を提供する企業に投資をして、積立の間は配当金や株主優待などのメリットも狙えればさらに満足のいく教育資金作りとなるだろう。

15年20年と長期で貯蓄の積み増しを考える場合インフレリスクは避けられない。ご家庭のリスク許容度も考慮しつつ、複数の手段による積立を考えてみてはどうだろうか。

海老原政子 ファイナンシャルプランナー
国内生保の生命保険募集人として勤務。ライフプラン全体から生活者視点・女性目線を活かしたアドバイスが好評。コラム執筆や家計相談、個人・企業向けマネープランセミナーを行う。エムプランニング代表。(AFP、住宅ローンアドバイザー)

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