2016年12月6日の参議院・厚生労働委員会において、塩崎恭久厚生労働大臣が明らかにしたところによると、年金滞納者のうち、約9割が年金保険料の支払い免除対象者という。本来ならば支払いが免除される状況なのに、保険料免除の手続きを行わないために滞納者扱いになってしまっているのだ。同じく保険料を支払えないとしても、保険料の「滞納」と「免除」「猶予」はどう異なるのか、年金を滞納するとどうなるのかを説明する。

目次

  1. 保険料滞納者の現状
  2. 差し押さえ?払わないとどうなるのか
  3. 国民年金よりも生活保護費のほうが支給額は多い?
  4. 困ったら相談しに行こう
  5. 「滞納」と「免除・猶予」は大きく違う

保険料滞納者の現状

2016年4月に厚生労働省が発表した資料によると、2015年度(2015年4月分~調査時)の年金の保険料納付率は61.2%、2014年度の年度末時における納付率は63.1%、2013年度の年度末時における納付率は60.9%だった。

期限を過ぎてから追納する人もいるため、納付率は翌年以降に若干上昇するものの、それでも70%前後に収まることが多い。これらのデータから納付率全体を見ると、期限内に収める人は約6割、遅れて納付するケースを含めても約7割と言うことができるだろう。

差し押さえ?払わないとどうなるのか

例外はあるものの、満20歳以上60歳未満で勤務先から給与をもらっている人は厚生年金、それ以外の人は国民年金保険料を支払うことは、日本の公的年金の基本的ルールだ。

どうしても支払うことができない人は、年金事務所などで事情を説明し、年金保険料の支払いの免除あるいは猶予を受けることができる。

もし、年金保険料支払いの対象者にもかかわらず保険料を支払わず、支払い免除や猶予の手続きを行っていないなら、保険料の滞納者として扱われることになる。

滞納者になると、まず「最終催告状」が送付され、それでも指定期限内に支払わない場合には国税通知法に従って「督促状」が送付される。

督促状に記された指定期限内にも支払わない場合は「滞納処分」が開始され、延滞金が課せられる以外にも、滞納者本人や滞納者、世帯主や配偶者ら連帯納付義務者の財産が差し押さえられることになる。

実際に、2014年度分の滞納者に対して1万3342件の財産差し押さえが実行され、2015年度分に対しては5844件の財産差し押さえが実行された。

国民年金よりも生活保護費のほうが支給額は多い?

生活保護費は居住する地域や家族構成によっても額が異なるが、定められている生活保護費最低支給額よりも収入が少ない場合は、所定の審査を受けて生活保護費を受給することができる。

例えば、東京都23区内に居住している60~69歳の高齢者単身世帯の場合、生活扶助基準額は約8万円。これに加えて住宅扶助などが支給されるため、平均でも月額10万円を超えることになる。

また、医療費なども免除されるといった措置を受けられる。

一方、国民年金はいくらもらえるのだろうか。40年間一度の滞納もなく国民年金を納めていた人は、2016年4月から支給される場合は年間78万100円、月にして約6万5000円を受け取ることができる。

比較すると、滞納なく保険料を納めていた場合よりも、生活保護費のほうが高いことが分かる。保険金を納めて年金を受給するよりも、年金をもらわず生活保護を受けたほうが良いと考える人がいてもおかしくないのが現状だ。

困ったら相談しに行こう

財産差し押さえなどのリスクがあるにもかかわらず、年金保険料を支払わないということは、なかなか勇気のいる行動だ。心穏やかに暮らすため、どうしても年金保険料の支払いができない状況に陥ったときは、年金事務所などに相談に行くことを勧める。

年金にはいくつもの免除・猶予制度が準備されているので、自分が制度の適用対象となるケースのいずれかに該当すれば、支払いの猶予や、支払いそのものの免除(全額・4分の3・半分・4分の1の4種類がある)となることもあるのだ。

例えば、学生のためには「学生納付特例制度」があり、保護者の収入にかかわらず、在学中は年金保険料の支払いを猶予してもらうことができる。

その後、10年以内なら追納することができるので、社会人となり収入が得られるようになったときにしっかりと猶予期間分の保険料を納めれば、満額の年金受給を受けることも可能だ。

また、家庭内暴力が原因で配偶者と異なる場所に住んでいる場合は「特例免除制度」を利用し、配偶者の収入を含めずに世帯収入を計算し、それが一定額以下ならば年金保険料の支払いを免除してもらうことができる。

「滞納」と「免除・猶予」は大きく違う

いずれにしても、未納を放置しておいては滞納になってしまう。早めに年金事務所などに相談し、免除や猶予の手続きをすることが望ましい。

きちんと手続きをすれば将来的に年金を受け取れるだけでなく、老後の生活をプランニングするうえでも明るい材料となるだろう。

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