クラウドファンディング,日本クラウド証券,FinTech
(写真=FinTech online編集部)

「目標投資リターンは5%の利回り」、「投資金額は1万円から」。融資型クラウドファンディングであるクラウドバンクを活用して行える投資の特徴だ。中小企業の支援や不動産プロジェクト、太陽光発電、風力発電などのファンドが用意されており、インターネットを通じて、数多くの投資家からの出資を募っている。

クラウドバンクを運営するのが日本クラウド証券。Webサイトなどを通じて情報を発信すると共に、新たなファンドの組成も推進しており、累計の応募金額はすでに、約83億4300万円にも上る。着実に応募金額を増やす日本クラウド証券で働く「リアル」についてを、片岡直毅取締役に伺った。

FinTechに金融の知識は役立たない?

「FinTech」は、すでに多くの読者がご存知の通り、金融と技術(テクノロジー)を組み合わせた造語だ。だとすれば、その分野にあるクラウドバンクでは金融分野の知識もつ多くの人材が活躍していると、一般的には想像するかもしれない。またIT企業で働くエンジニアやプログラマのように、ITのノウハウがものを言うともイメージしがちだろう。

他方で、日本クラウド証券の実態は、決してそのシンプルな想像には当てはまらないという。

片岡取締役はその点について「金融分野出身のスタッフは10%程度だ。金融分野で働いていた人材は金融の知識が見え過ぎているところがあり、知恵が回ってしまう。金融以外で働いた経験を持っているほうが、伸び代は大きく、金融の知識は武器にはならない」と話すなど、新鮮な目でFinTechを捉える利点を指摘する。

あえてウラを読めば、金融の知識がないからこそ気付くポイントや、従来とは異なる視野で金融を捉えることで、FinTechのサービスや製品をより洗練させた格好にしていく可能性を秘めているのかもしれない。

またマーケティングのスタッフにも新鮮な視野を求めたいという姿勢を片岡氏は示す。「従来型の金融マーケティングの視点だけではなく、しがらみなく、今まで実施してこなかった施策を『なぜできないのか』問い直す」(同氏)取り組み方が求められている様子だ。

片岡氏は「クラウド証券のビジネススキームは限られている。融資型のほかにも寄付型などがある」とした上で、クラウドファンディングへの新たな取り組みは将来の課題とした。併せて、「筋肉質の経営体質を目指して、経営をやりきる」と同氏は目の前の課題に集中する姿勢を示している。

元飲食店経営者や外国人も活躍

ただ、クラウドバンクは組織や人員の拡大を急いでいるわけでは決してない。実際の採用は必要な人材の補てんに絞っており、大きな賭けに出る態勢ではなさそうだ。他方で現在はさまざまな人材が活躍しており、新たに採用してもその人材が活躍する余地もある様子。

そうした環境を支えるのが、集まる人材が持つ多様なバックグラウンドだ。片岡氏によれば、元マッサージ師のエンジニアも同社にはいるそうで、実際の技術は後から学んで身に着けるというパスもある。

また元飲食店の経営者で、店を経営していた経験で培ったものの見方や仕事への取り組み方を生かしながら活躍するスタッフもいるとのこと。そんな経験を持つ吉岡恵一氏は「雇われているのは、会社がリスクをとってくれているということ。自分が経営していればリスクもパフォーマンスも自分持ちだが、そういった面を、会社目線で仕事に取り組めるのは、業務の改善などに役立てられているのではないか」と話す。

(写真=FinTech online編集部)
(写真=FinTech online編集部)

ほかにも注目したいポイントがある。外国人の従業員だ。片岡氏によれば、カナダ在住の台湾人のスタッフが日本クラウド証券では活躍しており、海外人材の能力も生かしながら、日々の業務を推進しているようだ。

同氏は「外国人でも仕事、ビジネスの経験があって、日本語を習得していれば十分に働いてもらえる」としており、国籍にはこだわらない職場づくりの様子が窺える。

組織全体でみれば、日本クラウド証券は外国人人材の活用ももちろん、マッサージ師だったり飲食店経営者だったりと、多様な背景や経験を持つ人材を集めており、ネットを活用した資産運用のきっかけを作り出す原動力への転換を図っていると言えそうだ。( FinTech online編集部

日本クラウド証券株式会社
本社:〒106-0032 東京都港区六本木七丁目4番4号 六本木Artshell 5F
代表取締役: 橋村 純
資本金:1億4240万円
ソーシャルレンディングの一形態である融資型クラウドファンディングを活用して、「目標投資リターンは5%の利回り」、「投資金額は1万円から」「期間は6カ月から」の資産運用の機会を提供する「クラウドバンク」を運営。中小企業支援、太陽光発電、風力発電などの各種ファンドへの投資機会を提供している。

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